私は出会い系サイトを使って援デリをしている。
まあ、娼婦だよね。援デリしてまーすっていうよりも、
職業は娼婦ですって答えたほうが、
かっこういいっていうのはただの個人的な美学というか、
ただの考え。それ以外の何物でもない。
あはは。本当に笑っちゃう。
この仕事にかっこういいもくそもないのに。
誰もやりたがらない仕事だよね。
社会にとって必要で、昔からあって、
多分一番歴史の長い仕事だけど、まったく尊敬されない。
むしろ、侮蔑と差別と見下された視線を与えられる。
そんな仕事。まあいいよ。
別に人に尊敬されるために働いているわけじゃないもん。
開き直っている。でも私ももう21歳。
21歳で娼婦って、そろそろ活動をやめるとき。
引退のときなんだよね。
娼婦の中ではおばさんな年齢だもん。
もちろん実年齢を客にいうわけがないけど。
そんなこといったってなんのメリットもないし。
名前だってデタラメ。出身地も嘘。
年齢だって、お客の好みによって18歳になったり27歳になったり、
本当にデタラメでなんでもあり。誕生日だって適当。
住所も嘘。
家族構成も生い立ちも過去の話も全部、将来の夢だって、嘘。
嘘ばっかり。これだけ嘘をついていると、
本当のことを忘れてしまいそうになる。
嘘の材料は真実なのに、その真実を忘れてしまえば、
元も子もない。
何が嘘で何が本当かわからなくなってしまうことが、一番怖い。
私は自分の誕生日を思い出せない。
だから、知りたくなったときは、どうしようか。
どの書類をみればいいのだろうか。
免許証も保険証も持っていないから確認のしようがない。
親とは絶縁状態だし。兄弟はいないし。
誰が私を私だって証明してくれるんだろう。